山根明季子『水玉コレクション No.06』[Japan: avant dossier from Japan adj-1101, 2011年] CD
作曲家、山根明季子の現在唯一のソロ名義のフィジカル作品「Dots Collection No.6」CDのストック入手。
この「Dots Collection No.6」は、NHK交響楽団の委嘱作品で、N響<Music Tomorrow>での初演ライブ録音をCDにしたもの。本人解説に「物質でいっぱいのデコラティブな「音ひとかたまり」の質感を、ひとつひとつ、観察してゆく音楽」とあるように、山根の人工物への嗜好・指向をみせる曲で、およそ30名の三管編成をあやつって造形的な「見える音」をねらう(指揮:パスカル・ロフェ)。しかし出てくる音は大仰なフルオーケストラのそれではなくFMシンセを思わせるデジタル機材的な音で、その安さ俗っぽさと機械的な響き・反復性がカッコよく、草間彌生を尊敬するという点も妙に納得。かつてのGRMのシンセ作品っぽさもある。
※山根は「水玉コレクション」で2006年日本音楽コンクール作曲部門(オーケストラ作品)で1位と増沢賞を同時受賞している。
山根は《KiraKiraDrone》名義でゲーセンやパチンコ屋の音響を素材にした「Videogame Arcade Ambience」や「Pachinko Ambience」というシリーズ作品を発表し、本名では「カワイイ^_-☆a」「キャンディロボ」などおたく系サブカルチャーのストレートかつ安直な俗物っぽさを取り込んだ作曲を展開。それは「自然の美しさは人間の手の届かないところにあるのだから、人間の「アート」は非常に人工的であってほしい」という考えの実践で、人工的=俗物ととることも可能。いっぽうでは塩見允枝子の回顧展やポーリン・オリヴェロス作品のプロジェクトを企画するなど、アカデミック(理性)アート側からできるぎりぎりの問いかけ実践を行っている気鋭の作家だ。
以下、公式ブログより作家自身のコメントを転載(原文は英語):
私は造形美術として「見える音」というコンセプトで音楽を作っています。音という現象は実際には目に見えないものですが、インスタレーションアートとして体験することで、音の動きの輪郭をなぞり、形や色、質感、傍らの空間などをリスナー自身の内なる知覚で感じられるように努めています。
ドットモチーフの6枚目の作品です。全体として一つの点が見え隠れするような構成になっています。この点は、純粋でシンプルな点というよりは、比較的大きな球体です。その色や質感をひとつひとつ繊細に見つめながら、聴き手を刺激するように作曲しています。
ビジュアルの「Dot」はポップなイメージ。それは毒ガエルのシミのような不吉な予兆。また、女の子らしい水玉模様も連想させます。ピュアな感じがする。だから堕落しやすい。
自然の美しさは、人間の手の届かないところにあると思う。だから、人間の「アート」は非常に人工的であってほしいと思う。そして、例えば人工的で一種の毒を含んだ人工着色料に畏敬の念を抱くのです。人工的で歪んだ美として、「Dots Collection No.06」という作品は、ヨアン・トントゥの彫刻作品「sacrifice」にインスパイアされています。私の作品は、ヨアン・トントゥの彫刻がそうであるように、鮮やかで不自然なピンク、少女的で冷血な、物質的で派手な、そして装飾的なドットで構成されているのです。
Mastaling : Isei Ben
Illustrated by Yuka Moriya
=作品仕様=
+ 紙ジャケット(背なし、ワンポケット)
TRACK:
1. Dots Collection No.6 [15 min]