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Andrew Poppy『The Beating of Wings』[UK: ZTT, 1985] LP
中古品(ジャケに経年日焼け、ほんの少しシワと折れ、8mm角程度の表面破れ一ヶ所。ディスクは綺麗でVg+からNM程度)
《祝・ダムタイプ初期音源LP化クラファン達成御礼(便乗)企画》
80年代に山中透と古橋悌二もチェックしていたAndrew Poppyの関連リリースを小特集。全てポスト・ミニマル・クラシックスでダムタイプの音楽解読のキー。
こちらはPoppyの1stソロ・アルバムでポスト・ミニマル名盤『The Beating of Wings』の80sオリジナルLP。
イギリス生まれのピアニストで実験音楽作曲家のPoppyは、在学中から(アメリカン・)ミニマル・ミュージックの方法を取り入れた作・編曲を試み、初期の活動ではロスト・ジョッキーというアンサンブルに関与した。本作はあのトレバー・ホーンのZTTから発表されたことが思えば意外。
ZTTは第一弾Frankie Goes To Hollywoodでいきなり世界的に成功し、第二弾のArt of Noiseは最初のデジタル・サンプラーを駆使した録音でクリエイター達を釘付けに。後者は山中と古橋も影響を受けまくったそうだが、その次の展開期に登場したのがAndrew Poppyという構図。ディスコポップのZTTが当時最新のポスト・ミニマル音楽をひっさげて実験的音楽をポップス界に問うという形になっており、ベルギーではヴィム・メルテンもデビューしポスト・ミニマルが確率した時期にあたる。※ダムタイプでは『睡眠の計画』『庭園の黄昏』の時期。
『The Beating of Wings』が凄いのは、40名以上の演奏家が同時演奏するというその規模で、オーケストラ総譜を書けるAndrew Poppyの技術もあるが当時イケイケのZTTの資金力あってのものと思われる。この時期の作曲はシステマチックな反復で実験を行ったオリジナルのミニマル・ミュージックとは違い、通常の調性を持つ曲の各パート(数小節)を反復演奏して引き延ばし、さらに反復の過程で微細に演奏内容を変えて進むという構成。映画・舞台音楽でフィリップ・グラスが書いた一連の作品とポスト・ミニマル先駆のマイケル・ナイマンの中間のような音楽で、ゆえに厳格さも冷たい抽象もなく、ある種のエモーショナルさも備えたまさに「ポスト」ミニマルという典型作品。トチ狂ったようなB1「Listening In」はZTTへのへつらいか才能の余裕か!?