ダーク&コールドがトレンドのベース・ミュージックにあって真逆のメジャー・コードのみでぶち上げる中毒性高いDUB。幸福なメロディーのループとミラクルな転調で<キラー>の定義は更新された。
アルバム『No Broken Hearts on This Factory Floor』(2015年)以後、Rezzettの活動が中心になっていたTapesが紆余曲折をへて放った挑発的なシングル。近未来的ディストピア感が世界を覆う今、あえてメジャー・コードでの作曲に挑戦した「Summer Jam」は、時代的に異質ですらある幸福感に満ちているが、それはダーク・ヴァイブスくそくらえというメッセージにもとれる。Rezzettでやり倒してきた、ヨジれてヒネくれた電子的表現(<これも最高)に慣れた耳なら戸惑うような白玉コードを多用した曲だが、二度訪れる転調の瞬間、ダーク&コールドの中で忘れかけていた音楽のパワーに遭遇するだろう。また、メロディアスでポップだがイージーリスニングにならない理由はずっとベース・ミュージックを追求してきたことが大。複雑なアートフォームに発展したエレクトロニック・ミュージックが置き去りにしたものを問いかける、ほがらかでシリアスな問題作だ。大胆なディレイとmid-80sフレイヴァーなシンセ音で演奏された「Salavere」もTapesの新展開を聴かせる重要曲。
マスタリング:倉谷拓人
TRACKS:
1. Summer Jam (8:26)
2. Salavere (7:03)