[France: Unidisc, 1965] LP
2016年当時89歳で「新作」を発表し電子音楽ファンを驚かせ喜ばせたピエーリ・アンリ(1927-2017)は、メシアンとブーランジェに学んだ正統アカデミック作家ながら、その後ミュージックコンクレートのピエール・シェフェールに合流し道をアウトサイドに踏み出した仏電子音楽界の顔。一般に知られるのは、モーリス・ベジャールのバレエ『Messe Pour Le Temps』(1968)のため作曲家ミシェル・コロンビエと共作したフラワーサイケ電子ロック「Psyché Rock」ですが、実はアンリがベジャール・カンパニーから委嘱された最初の作品がこの『緑の女王』(1963)。あまり話題にならないこのアルバムは、MOOGシンセの導入で60年代から耳馴染みになる電子音(例えばHot Butterの「ポップコーン」)を散りばめた『Messe Pour Le Temps〜』の何年も前、人間の器楽演奏とミュージックコンクレートの手法とをハイブリッドして作ったもので電子音は全面には使用されていない。海の者とも山の者とも思えぬ本作の怪しい内容は、アカデミーでは拒絶されただろうし、ポップスにはアヴァンギャルド過ぎ、ハリウッドのSF映画を除けば、おそらくベジャールのような前衛バレエにしか選択肢は無かったはず。この怪しいロウな楽音と原始的ともいえるモンタージュ的なカットアップで生まれるゴリゴリのサウンドは、この時代独特の雰囲気と強さがあり非常に魅力的。後年、『Messe Pour Le Temps』LPのB面にに抜粋が収録され、Philipsから装丁を変えた再発盤も出ますが、このUnidisc盤がオリジナル・リリース。
ディスク VG+〜VG:スレプチ多め、良面の頭にキズがありますが針飛び無し、B面SOL。
ジャケット VG:経年褪色とシミと折れシワ。表面下部WOC、ジャケ底コーティング印刷剥がれ4cm。
Sample 1
Sample 2