カサイ『庵点(いおりてん)』[UK: Chinabot CHI054 2025] LP
ジャップ・カサイ改めカサイさんのどこにも売っていないLPが嬉しい入荷!
カサイはかつて日本のSun Arawを標榜していた関西の誇る真実のOGで、そのスタイルは本人が「駅弁売りセット」と呼ぶ、首に紐をかけて固定したコントローラーをまさに昭和の駅弁売りのように持ち、トレードマークの頬被り(ほおかぶり)をしてフロアをふらりふらりと練り歩き演奏するというもの。その極めて間の抜けた音楽と相俟って、一度そのステージを目撃した者は末代まで語り継ぐであろうキラーな存在。最初は日本の民謡サンプリングを主体にして音楽を組み立てていたが、この英チャイナボットで発表された2025年作は、手慣れたサンプリングをあえて封印し、さらに初めて、しかも全曲、自らの声で唄って大いなる跳躍を図った内容となっている。労作唄、いわゆる土地の民謡、クラーク内藤とデュエットした(明治時代の)演歌調の曲を織り交ぜて、令和の時代の民謡のやり方を提案する未来志向の作品。仕上がったものを皆様にお見せするというエンターテインメント方向ではなく、クエスチョニングしていく実験性に満ちている点でもエム好み。今年、英『Wire』誌で1ページを割いてカサイさんのインタビューが掲載され話題になりました◎ MUST!!
※題名の「庵点(いおりてん)」とは、和歌・俳句・長唄などの歌詞で、歌の始まりや改行を示す約物のひとつで、屋根のような記号のこと。