ドミンゴ・クーラ『ティエンポ・デ・ペルクシオン:アンソロジー, 1971-77』[EM1102LP]
アルゼンチン・フォルクローレ界の巨人、ドミンゴ・クーラのLPのみのコンピレーション。
ドミンゴ・クーラは、ボンボ奏者(アルゼンチンの民族打楽器)として、40年代よりウーゴ・ディアス、アリエル・ラミレス、メルセデス・ソーサ、アストル・ピアソラ、ガトー・バルビエリなど数々の大物ミュージシャン達のためリズムを紡ぎだし、リズムと音響上の探求を行って、フォルクローレに革命を起こした新進的な打楽器奏者である。古くからのアルゼンチン音楽ファンには説明不要の人だが、若い世代、刺激的な新しい音を求め、世界に目を向けたクリエイター達によって中南米音楽が再び見直されている昨今、その中で「大いなる再発見」としてクーラが脚光を浴びることになった。
多様で芳醇な音楽背景を持つアルゼンチンには、チャーリー・ガルシア、スピネッタ、モノ・フォンタナ、フアナ・モリーナ、サンチャゴ・ヴァスケス、カブサッキ、カルロス・アギーレなどなど刺激的なアーティストが次々と現れているのだが、そのセンスの水流を辿ると、ドミンゴ・クーラの諸作品に出会うことになる。また、クーラが深く関与したエドゥアルド・ラゴスの『Asi Nos Gusta』(1969)は、アルゼンチン・フォルクローレ革命の金字塔として名高い。
クーラ初のリーダー・アルバムは彼が40代半ばの1971年に発表されたが、その1曲目を飾ったのが、今も人々をノックアウトし続けている「Percusion(ペルクシオン)」だ。この14分近い大作は、打楽器の多重録音・編集によってリズムがレイヤーされ、祭儀的トランス感に誘う作品。これを筆頭に、今回のアンソロジーでは、彼が発表した全4枚のソロ・アルバムから、彼の革新性と音響への探求が極まったものをコンパイルし、聴くことも難しい貴重曲も収録。チャカレーラ、カンドンベ、マランボ、カルナバリートといった中南米のリズムが飛び交い、彼をサポートするフォルクローレの革新者達とのコンビネーションが素晴らしく、リズム探求を続ける現在のクリエイター達にも刺激を与えていることを改めて確認できる。サイケデリックでディープなファンキー・フュージョン、フェラ・クティばりのアフロビート風の曲もあり驚きの連続。(しかしアルゼンチンのミュージシャンはどうしてこう演奏が巧いのか!)
この刺激的なカヴァー・アートはフィンランドのミュージシャン/アーティスト、クープー(Kuupuu)ことヨナ・カランカの手になるもの。
*解説:斉藤吉恭/Newtone Records、谷本雅世/PaPiTa MuSiCa
*高品質ヴァイナル
*最新リマスター
TRACKS:
Side A
1. Percusion 13:48
2. Anoranzas (Chacarera doble) 3:13
3. La Vieja (Chacarera) 2:26
4. Mincura (Candombe) 4:05
Side B
1. Viento Norte (Malambo Norteno) 3:32
2. La Trunca Norte (Chacarera) 2:03
3. La Pesca Del Indio (Carnavalito) 2:50
4. Vidala De La Copla (Chaya) 2:17
5. Huaico Hondo (Escondido) 2:17
6. Golpes De America (Improvisacion sobre ritmos Americanos) 4:20
7. Juana Azurduy 7:20