Neo Geodesia『Oknha Stamina (កម្លាំងឧកញ៉ា)』[UK: CHINABOT CHI056, 2026年] LP 180g重量盤
話題盤入荷!!
《CHINABOT》という挑発的かつ戦略的なレーベル名を掲げロンドンで孤軍奮闘するカンボジア人クリエイター、Saphy Vong(サフィー・ヴォン)のNeo Geodesia(ネオ・ジオデシア)名義大注目新作アルバム。
エム・レコードでリリースしたクメール・ヒッポホップ・コレクティブ《Klap Ya Handz》の主宰ヴィサル・ソックと同じく、サフィーはクメール・ルージュによって失われた音楽文化という歴史を背負っていますが、難民生活を経てカンポジアに帰還しゼロから音楽を築いていったヴィサルとは対照的に、彼は国外でそれを追求しています。そして「師匠がいないので、新しい時代のために自分なりのクメール音楽を作ろうと決めた」という最新アルバム『オクニャ・スタミナ』は、それを有言実行した作品です。日本人のKASAIが『庵点(いおりてん)』で試みていることと同様、断裂してしまった故郷の文化に対して(カサイの場合は俚謡。とうの昔に我々現代生活の中で本来の俚謡の居場所は消失した)、その再現がもはや不可能であるがゆえに個人的な物語として想像・創造するしか術がなく、正統性を失ったがゆえに生じるその歪さ、奇形さ、危うさこそが非常にリアルで、真実になり得る、正解など誰も答えられないのだから、ということではないでしょうか。
本作は、ピンピートとヴォン・プレン・プラダルというクメール古典音楽、カンボジアの伝統的なオーケストラ音楽、古代より続くクメールボクシングの伴奏音楽、彼が難民として90年代に過ごしたフランスで影響を受けたパワーバイオレンスといった種々の様式を、エレクトロニック・ミュージックというパレット上で再構築を試みたものです。他方、『餓狼伝説』や『キングス・オブ・ファイターズ』といった90年代の格闘ゲーム音楽へのオマージュも散りばめてあってゲーム好きにも訴える内容(ちなみに彼のお気に入りはムエタイとエレクトロニクスを融合させた『餓狼伝説』のジョー・ヒガシのテーマ曲)。その他、歴史的・政治的・文化的メッセージを重層的に忍ばせた『オクニャ・スタミナ』ですが、端的にいえば失われたクメール文化をプレステ上で新たに創造したかのような、ユートピアともディストピアともつかない妙な温度に独特なものがあり。身内の死をトリガーにしたかなり感情的だった前作『2562 Neon Flames』(2021年)とまるで異なる理知的な作品。